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帰りの電車で殴り書き。


 ぶっきらぼうに渡された可愛らしい紙袋からは甘い匂いが漂っていた。受け取ってから、はて、今日は何かあったかしらと考えて、思い当たるイベントが一つ。近頃勉強とクラブ活動、そして小遣い稼ぎにしているバイトのお陰で日付感覚をすっかり忘れてしまっていた。
 なるほど。彼が朝から挙動不審だったのはこの為か。律義な人だ。
 夕陽に照らされた彼の顔はまるで真っ赤に熟れた林檎のよう。少し、緊張しているのか表情が強張っている。そんな彼はとても可愛くて、愛おしい。不意に、悪戯心が疼いた。

「私としては、」

 一歩一歩私が近寄ると彼の肩が揺れる。より一層顔が赤くなっていく。

「お返しは、」

 目の前には真っ赤な果実。もう後には退けない。勢いに任せて彼の唇に一瞬、口付ける。

「こっちの方が好み。」

 何が起こったのか理解出来なかったらしく呆けた顔に更に一瞬。頬に噛み付いた。途端、奇声を上げる彼にしたり顔。これだから彼は面白い。
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